桜
5分後
「華桜さん!おまたせしました!」
「ではおじゃまします、今日はよろしくお願いします」
軽くお辞儀をし、靴を脱ぎ、ハナ坊に部屋を案内される。
洟木宅は1階建てでアニメの「チビま●子ちゃん」の家と似ているが少し古い感じがする。しかし家の中は見かけによらずきれいで3LDKの結構広い家である。
ハナ坊はハルのほうを一瞬向く。
―――ハルには少し小さい部屋だが大丈夫かな?と言う意味だがハルには
―――オイラは母ちゃんの部屋にいるから無駄だぞ?と察したらしく、ハナ坊の肩を軽くたたき、鼻で笑う。
―――それくらいなら問題はないわ!とハナ坊は感じ取ったらしく、やや満足げでいるが実際は
―――なら私の部屋に連れてくまでよ!と言う意味らしい・・・。だけど結局そのまま寝落ちしてしまったハルでした。
「ここがハルの部屋だぞ、好きに使っていいがここでは食べもん食うなよ?」
ハルが案内された部屋は4畳半くらいの畳の部屋で右端の机には誰かが使っていたような痕跡が残っていて、その隣に棚があり本がずらりと並んでいた。それで左端に布団が畳んであった。
「この棚の本は父ちゃんが集めたものだから、多分ハルにも読めるんじゃないかな?」
「そうだね・・・でも僕はいつも持ち歩いてるから大丈夫かな?」
「どんな本?」
そう言われてハルはリュックの中から「桜百科」という本を取りだした。
「なに?その本?」
「これは日本全国の桜について書いてある本なんだ」
気づいたら二人は布団の上で寝転がりながら本を読んでいた。
時刻は7時前、そろそろ夕御飯の時間帯だ。ハナ坊とハルは椿に呼ばれ、3人でご飯を食べている。
「そういえばさ~、なんでハルはあの本持ってるの?」
ハナ坊はさっきからの疑問を吐き出すように言うと、ハルは持っている箸を置き、真剣な顔で話し始める。
「実は・・・僕は不治の病であと1年で死んでしまうんだ」
「!?」
ハナ坊と椿は食べる手を止める。しばらく沈黙が続く。そして最初に喋り始めたのは椿だった。
「あの、華桜さん。ちょっといいですか?」
椿はハルを奥の部屋へと連れていく。その部屋は実の父親らしき人のお仏壇だった。椿はお仏壇の前で正座し、ハルに隣に座るように言うと、線香を立てる。
「華桜さん。実はおじいさんは私たちの目の前で死んだんです」
「・・・それはお気の毒に・・・」
「それからね、実はおじいさんが育てた桜を形見変わりにして山のふもとまで行っているんです。でも実はおじいさんが死んでから笑顔を一度も見せなくなった」
「・・・今日、実君が近くの子たちにいじめられてました」
「知っているわ、実から聞いた。・・・実はいつもふもとに行くたびにいじめられてるの。だから華桜さんも言ってください。もう行くのはやめにしてと」
ハルはしばらく考えていると、椿が立ち上がる。椿は「また明日聞かせてください」と言い、去ってしまった。