桜
「なぁ、ハル」
ハナ坊が下を向きながら淡々としゃべる。
「お前があと1年で死ぬって聞いた時さ、オイラなんでかガッカリしたんだ」
ハナ坊の目から一粒の涙が落ちる。それでも話し続ける実。
「オイラ、さ。母ちゃんを安心させようとさ。あの桜毎日の世話してんだ。だけどさ、ハルが
あの桜の気持ちを感じ取ったときさ。・・・なんでか分かんないけど、父ちゃんのような気がしたんだ。・・・赤の他人で、おまけに知り合ってまだ1日も経ってないのにさ」
ハナ坊は泣くのを抑え、それでも涙がこぼれ、顔が引きつり、声が徐々に嗄れてく。
「おいらの父ちゃんは、冒険家で日本中のあちこち回ってるからオイラ、父ちゃんの写真しか見たことないから」