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ウォーズ•オブ•ヘヴン 01-1

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 死んだあとどうなるかなんて天界の管轄外。誰もわかりはしない。
 「お前…本気で言ってんのか?」
 彼は提案を受け、案の定頭に血が登ったようだ。
 真剣な眼差しが、鋭く、まっすぐ向けられる。虎視眈々、という言葉が似合うのだろう。
 「ああ。本気だ。宣言(コール)!《不屈の聖戦》!!」
 『受諾。《不屈の聖戦》を開戦します。』
 機会音声のようなアナウンスがどこからかかかる。
 これによって、ルール上でなら人を殺めても犯罪とはならなくなる。
 「さあ、始めようか!!」
 「…お前は、朝霧先生にも迷惑をかけた。…なんの関係無いのに!!だから絶対に許さない!」
 ゴウ!!!!
 剣を引き抜いた“任務対象”は、勢いよく白銀が埋める地面を蹴り飛ばした。
 すぐさま身構え、瞬時に自らの剣も引き抜く。
 …正直、何も考えていなかった。頭で考えるより先に体が動き、正確に、相手の剣の腹にぶつける。
 ガン!!!
 確かな剣の交錯する音。
 他に見るものはいなかったが、周りから誰が見ても、普通に剣を交えたように見えたであろう。
 しかし……その感触は軽かった。
 まるで、相手の力量を試すかのように。
 そのまま振り切ってしまえば良かったものを、想定外の出来事に少しためらってしまった。
 (なんだ……?こいつ…剣の当たった感触が…?)
 驚きつつ、“任務対象”の彼の顔を見る。
 ……ゾッとした。
 …だって……笑っているんだ。
 そのとき、白の少年は気づいていなかった。
 彼の懐から、全ての力を込めた拳が現れた。
 「へっ…歯を食いしばりやがれっ!」
 …掌底。だった。
 その一撃で、白の少年の体は重力を失ったかのように浮き上がり、校庭の端まで吹き飛ばされた。
 何が起こったのか理解できなかった。
 剣を交えたはずの相手に、まさか拳をぶつけられるなんて。型破りなんてモノじゃない。ましてや魔法の力でも剣の力でもない。ただの拳。
 しかし…この威力は…。
 強者なんて言葉では足りない。こんな異端児相手に実力で及ぶかどうかも不安だった。
 …それでも、俺は立ち上がらなきゃいけない理由がある。
 「っチッ…なかなか痛い一撃食らわせてくれるじゃないか…。面白いねぇ!」
 白の少年のスイッチが入った。
 先ほどの彼の一撃のように、白銀を蹴り飛ばし、剣を引き抜いて高速で近づく。
 今度は剣を本気で交えたようだ。強い手応えが感じられる。
強い一撃に反動が返ってきたが、動じない。左!右!左!と相手を翻弄する。レイピアは、1つ振るうたび白い閃光が走る。
 速さでは、白の少年の方が勝る。速さで押せば、間違いなく相手の体力と集中力を削ぐ。そして何より、太刀ではレイピアの光速からは逃れられない……
 そう、思っていたのがまず誤算だった。
 理由はわからない。理論もわからない。だが確実に、彼の剣一撃一撃からは打撃が返ってくる。しかも、自分より強い威力で。
 刺そうが、切ろうが関係ない。
 …光速について来る。
 (こんなに…太刀さばきが速くていいのか……?!)
 呆気にとられた少年の目には純粋な恐怖が浮かんでいた。
 あり得ないんだ。
 そんなことを考えている一瞬の隙。彼の太刀は、迫るレイピアの腹を正確に薙ぎ払った。
 ガキィィン!!!
 今まで以上に大きな音。レイピアの腹を薙ぎ払われた少年の体は、守る盾の無い隙だらけの状態となってしまった。
 すぐさま体制を立て直そうと空中であがく。
 しかし。
 ……彼は見ていた。
 ……横から太刀が走ってくるのを。
 まるで、相手だけ時間を進められたかのような感覚だった。自分に対処する余裕など全くなかった。
 この戦いは、殺さなければ、ルール上では大丈夫。殺さなければ。
 勝負をつけるために、深い傷を負わせるのだろう。
 迫る太刀が深く入り込むリアルな感覚が少年を襲った。
 なぜか冷静だった。
 しかし、考える必要は何も無い。
 切られるなら。
 ……剣は確実に少年の横腹に当てられた。
 勝負はついた。
 
 「おい…立てよ。」
 彼の静かな声が聞こえた。
 …彼はこの体にまだ立てと言うようだ。
 まあ、意識があるだけましだが。
 「お前はこんなもんじゃないんだろ。教室のあの閃光はどうした!」
 脳に直接通じて来るような声だ。
 あぁ。魔法のレパートリーならあるな。でも、動けないだろ…。
 …俺は負けたんだ。
 「まさか…太刀の腹での一撃でへばるなんて無いよな?」
 ……?
 ……え??
 こいつ、何言ってるんだ?
 疑問を浮かべながらも、切られたはずの場所に手を当てる。
 ……傷口はなかった。
 なんだこれは…?
 切られたところが治っている…?
 違和感しか無い。
 …まさか、だが。
 こいつは、あの一瞬で、わざと太刀の腹をぶつけたって言うのか?
 切ったら勝ちだったというのに?
 当たる寸前まで、刃はこちらを向いていた。それは確かだ。
 「本気じゃないやつに、真剣をぶつけてどーすんだ。お前の本気を出して戦えよテメェ…。」
 …そういうことか。
 俺は、この時点で彼に心で負けていたんだろう。自分なら…突然襲いかかってきた相手がいたのなら、あのまま切っていたのかもしれないと…。
 彼が求めているのは勝利ではなく、実力の近いライバルだということ。
 不思議な、というより変な考え方のやつだった。
 それでも…。
 そんな考えは…案外嫌いじゃない。
 それを求めるならば…応えない訳にいかない!
 「ふっ…お人好しだね…。」
 「お人好しで、何が悪いんだよ。」
 「悪くない。むしろ…最高だ!情けをかけたことを後悔しな!お望みの本気を出してやるよ!」
 倒れたときの冷たい感覚はまだ拭えないが、しっかりと、二本の足で雪を踏みしめ立ち上あがる。
 緊迫した空気が立ち込めた。
 お互いが少し間合いを取るため、一歩引き下がった。
 「見せよう、この剣の真の力を!!【天使の威光】エンジェリックグロウ!」
 すると、白の少年は剣を天高く掲げた。
 何かの力を受け取るかのように。
 その瞬間だった。
 「ホーリーフラッシュ!!」
 閃光。今までとは比べ物にならないほど真っ白の閃光が彼の目を刺した。
 「なんだこれっ!」
 閃光の魔法だ。体内と体外の光のエネルギーを一点に集めて放出したのだ。
 彼の目は、魔法で作り上げられた眩い光によって一時的に封じられた。
 その一瞬の隙に、白の少年は走り込んむ。
 走ってくる音に気づいているのか、彼は剣をしっかり構えている。しかし、目が見えていなければこっちのもの。
 ギン!!
 と言う音をたて、彼の剣を一度薙ぎ払う。
 「お返しだ!」
 驚いてる彼の左頬に、容赦のないリベンジの拳を打ち込んだ。
 彼は雪の上を転がってゆく。
 そして、拳の力が作用仕切った頃、彼は仰向けになって止まった。
 でも、少年は笑っていた。
 「はははっ。おもしれぇ!久々にいい相手が見つかったぜ!っさあ!俺も本気でいくぞ!!」
 立ち上がり、剣を構える。
 白の少年は、構えた剣に向かってただ全力で攻め込んだ。
 相手の体に本気のレイピアが叩き込む。