ウォーズ•オブ•ヘヴン 01-1
右からの一振りを刃の根元で受け、左からの突きを刃先で弾く。上から、左から、下から。
白の少年も、彼の剣さばきに慣れてきたのだろうか。スピードも追いついてきた。
完全に実力が拮抗していた。
…そう、これは駆け引きだ。どこで一度剣を止め、どこで攻め入るか。判断ミスが命取りになる。
ギン!!
剣が十字に交差する。
刃と刃のこすれ合う音。
「お前…なかなかやるじゃねぇか」
「さすが…この学年屈指の…強者と言ったところかな…」
2人とも息をかなり切らしていた。
普通なら動きが鈍るし、疲れも当然出てくる。はずだ。
でも、体はまだ求めている。
…まだこいつと戦いたい!!
「うおおおぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁぁ!!」
まだまだ変わらない威力とスピードで剣は交わる。
バケモノのような底なしの体力だった。
この戦いを見るものはなかった。が、しかし、もしこの戦いを見た者がいたとすれば、アルカンゲロス同士の戦いだとは思わないだろう。
あまりに速い剣。
ぶつかる度響く金属音。
踏み込むたびに舞う地面の雪。
真冬であるというのに、2人は心も体も熱く燃えていた。
その熱さが届いたからなのか、空から降ってきていた雪はいつのまにか止んでいた。
「やっぱ長期戦は向いてねーわ俺。」
首に巻いていたマフラーを外して、天を見上げ言った。
「僕も、こんなにまでなると思わなかったよ。」
と、白の少年も呟く。
やはり、お互い限界だったようだ。
「…そろそろ、終わりにしようぜ。」
「ああ。僕もこの一撃にかけるよ。」
剣を構える。が、その構えは乱れ、息は上がりきって、剣を持つ手も地を踏む足も震えていた。
弱々しくなった一歩が踏み出される。
そして、2人は同時に走り出した。
「「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」
2人は出せる全ての声量で叫んで走った。
いや、走っているように見えなかったかもしれない。
体力も限界になって、泥臭い試合だったかもしれない。
それでも、2人は前進する。
目の前の好敵手に向かって。
……ザクッ!
叫び声が途切れた頃。
確かな切った感触。
自分の痛覚は失われてしまったのか、なんの痛みもない。
何がどうなったか理解できない。頭が真っ白だ。
ははっ、勝てた…のかな。
そんなことを考えながら、雪に倒れこんだ。
倒れこんだその白い雪の上には、血の赤がゆっくり滲んでいた。
傷は浅かったが、それでも正確に2つの剣は横腹を切り裂いた。
雪の上。2人の少年は意識を失い、眠りについていた。
しかし、その顔は2人とも満面の笑顔だった。
同刻……
暗闇の部屋で……
「あの子たち、なかなかやるんじゃないかな?」
『へぇー。お前がローランカーを気にするとは、珍しいこともあるもんだな。』
「いやぁ。魔法無しでこんなに強いなんて…。“あの人”以来じゃないかな?」
『はっはっはっ。笑えるねぇ。あの、“翼の世代”の?心配しすぎじゃねぇのか?』
「心配しすぎで済めばいいけどな。自分はあの子を手駒にしておいてもいいと思うんだけど?」
『あー。考えるのはいいが、期待外れに終わっちゃうと思うよーん?』
「まあ、見てればわかるさ。」
『うーん。面白いんじゃない?お前が見込んだ男。だなんてさ。』
……ねぇ、12神。“アレス”?
作品名:ウォーズ•オブ•ヘヴン 01-1 作家名:冬葉一途