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和尚さんの法話 『三世の因果』

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ていったのが、微妙比丘尼。

是の微妙比丘尼という人は女性ですが、阿羅漢なんですね。
阿羅漢というのは、三界解脱した人で、もうこの世へ生ま
れてこないという人です。
舎利弗とか目連とかそういう人と同じ位に到達した人です
ね。

そこへ行って、同じことを質問をしたわけです。
どうぞご指導頂きたいと。
そしたら何でも聞き下さいと。
もう阿羅漢ですから、何を聞かれても困ることはない。
過去のことを知りたいのですか。
現在のことを知りたいのですか。

未来のことを知りたいのですかと、お経に説いてます。

「其の時、微妙比丘尼即ち是に告げて曰く、汝三世に於
いて何をか説かんと欲するや」

訪ねてきた数人の者に、過去世、現在、未来に於いて何
を聞きたいのかと、こう行ったんですね。
そして訪ねて行った人たちが、過去のことや来世のこと
はさておいて、現在のことを聞かせて下さいと。
そこでそれに従って、自分の現在の体験を語ってくるわ
けです。
その微妙比丘尼という人が、仏門に入るに尽いての動機
があるわけですね。
今の坊さんは、ほとんどが寺に生まれて寺を継ぐという
のが普通ですが、お釈迦様の時代は、皆が在家ですね。
出家するわけです。
お釈迦様でもそうですね、在家に生まれて出家するわけ
です。
この微妙比丘尼も在家に生まれた。
而も立派な家の一人娘に生まれた。
そして蝶よ花よと大事に育てられた。
そして年頃になって、またそれも立派な家の人と縁があ
って結婚をする。
ところが、子供も一人生まれたんですが、主人の両親が
死んで、それまで栄えていた家が急に没落してくる。
その両親にはその徳があったけど、息子夫婦には徳が無
かったというわけですね。

そして二人目の子供が宿った。
それまで大勢の人使用人がいましたけど、一人辞め二人辞
めしてきて商売も上手いこといかないので、閉じてしまっ
た。
そして二人目の子供が生まれるということになったので、
私の故郷へ行きましょうということで、主人と一人の子供
の手を引いて歩いて旅をするわけです。
歩いての旅ですから、どれくらいで帰れるというのも分か
ってますわね。
そして実家でお産をすると、十分計算をしているわけです。

ところが、長旅の疲れで急に産気づくのです。
そして森の中で野宿するんですね。
そこで二人目の子供が生まれたわけです。
そうしましたところが、血のにおいを嗅ぎつけて大蛇が出
てくるのです。
その大蛇が自分のところへ来るべきはずだったのが、その
途中に主人が寝てたんです。
その主人を飲んでしまうわけです。
翌日になって、主人はもう蛇にのまれてしまって、仕方が
無いので生まれた子供を着物で包んで抱いて、もう一人の
子供の手をひいて、また旅を続けていくわけです。
途中に河があって、河の深いところがあって浅いところが
ある。その浅いところなら歩いて渡れるんです。
いつもその河を渡ってるので浅いところをよく知ってるん
ですね。
ところが、お産のあとで身体が弱ってる。
そこへもって自分は子供を抱いてる。
一人は手をひいてる。
とても三人一緒には渡れないということで、大きい子を一
人岸で待たせておいた。
お母ちゃんは、この赤ちゃんを抱いて先に河を渡るから、
赤ちゃんを向こう岸へ置いて、また迎えにくるから迎えに
来るまでここで待ってなさいよと。
言い聞かせて、赤ちゃんを抱いて河を渡って、そして河原
へ赤ちゃんを寝かせて、そして引き返すわけです。
待たされた子供は、一応は言うことを聞いて辛抱してたけ
ど、お母さんが迎えに来てくれたので、嬉しくなってお母
ちゃあんといって、その河の中へ入ってくるわけなんです。
来たらあかんと、子供は浅いところも深いところも分から
ないから。
言うことを聞かないで、あっという間に流されてしまうんで
すね。

身体が弱ってるので、それを助けることが出来ない。
結局その子を見殺しにしてしまうわけです。
やむを得ず、仕方が無いから引き返す。
其の間に、岸へ置いた子供を見ると、オオカミに食い散らか
されてるんです。
あまりの自分の不幸と、それで身体の衰弱で、そこで気絶し
てしまうんです。
それでしばらくして、ふっと気が付いたら、自分の実家の隣
の家の主人が立ってた。

そこの家へ行くことになってたんですね。
或ることがあって知らせに行く途中で、知らせに行く当の
本人が河縁で倒れてるから、揺り動かして介抱してたわけ
です。
それで、ほっと気が付いて、ああ、おじさんということに
なったんですね。
いいところげ出会った、私はこれから貴方の家へ行く途中
だったんだと。
私の実家はどうなっていますか、お父さんお母さんは元気
にしていますかと聞いた。
そのことだと。
貴方の家は火事になったんだと。
火事でお父さんもお母さんも死んでしまったんだと。
家は全焼で灰になってしまったんだと。
それを知らせに行くところだったんだと。
それを聞いて、また気絶してしまった。
結局、そのおじさんの家へ引き取られてお世話になったん
です。
まだ若いし、子供も死んでしまってるので、縁談が持ち上
がって結婚生活にはいったわけです。
ところがその主人というのが、酒乱だったんです。
酒を飲むと、全く人格が変わってしまって、何をするかわ
からんという人だったんです。
然しそれでも恩になったおじさんに世話をしてもらった話
ですから、そこで辛抱しているうちにまた妊娠した。
ところがお産をしているときに主人が居ったら何をするか
わからないというので、主人が外出しているうちに産婆さ
んに頼んで家の中でお産をしていたわけです。

そこへ主人が帰ってきたんです。
戸を叩くが、入ってきたら何をするかわからないので開け
ないので、余計に暴れてきた。
主人が帰ってきたというのに、戸を閉めてなにをしてるん
だと。
お産ですと言っても聞かない。
それで戸を蹴破って入ってきた。
この子供は俺の子と違うだろう。
お前、この子供を食えと。
食わねばお前を殺すぞと。
そういうむちゃくちゃな主人なんですね。
お経にも書いてますが、私は命が欲しさに、その子供を食
べましたと。
ところが、こんな主人についていたら先の見込みは何も無
いということで、主人の留守中に逃げたんです。

そして、或る墓場へ行きついたんです。
その墓場は土葬ですから、土饅頭がたくさんあるわけです。
その墓にもたれてうとうとしてたわけです。
その墓は、或る家の奥さんが死んで埋まってたんですね、
そこへその主人が参りにくるんです。
そうしたところが、奥さんの墓にもたれてうとうとしてい
たので、貴方は誰ですかと聞いた。
私は天涯孤独の人間ですと。
その主人は、それだったら家へ来ませんかと。
自分も生活に困るわけですから、女中でも何でも結構です
からというので、その家へ連れてってもらう。

そしてそこで夫婦のような生活に入るわけです。
そうしますと、日本の昔もそうですが、強盗があるわけで
す。
武力で家を荒しに来て物を盗るというような、そういうグ
ループがあるわけです。
その強盗に狙われて、そして主人が殺されてしまうのです。