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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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第3章 降臨~Sadalmelik2~




 そこは狩猟小屋だった。数百年前から森の中にひっそりと存在するそれは、狩猟小屋と言うよりコテージの様相であり、内部は定期的に管理されている為直ぐに宿泊可能な程整然としていた。
 男は猟銃袋を壁に立て掛けるとバックパックを無造作に暖炉の脇に放った。ニット帽を脱ぐと椅子に座り、車から小屋に来るまでの間に靴にこびり付いた泥を落とす。そしてバックパックから取り出した端末を開いた。

 この一帯は男の古くからの友人の所有地だった。男と友人は季節が来る度猟に明け暮れ、この狩猟小屋はしばしば彼等の寝泊まりの場となった。彼等の獲物は主に鹿だった。もし今、林の中を歩く男の姿が見られていたとしても不審に思う者は誰もいないだろう。
 もう一つ、男がこの場所を選んだのは理由がある。男の目的地は、ここから車で数時間の距離にあった。オフィスで何食わぬ顔をして仕事を続けながら指示を出す事も可能だが僅かな動揺が周囲に悟られる恐れがある。しかし目的地に直接出向き、あの粗暴極まりない連中と関わるのはなるべく最小限にとどめたかった...あの女の断末魔の瞬間をこの目で見る事が出来ないのは残念だが。

「ここはルイの所有地なのか? メリク?」

 低い声に彼、サダルメリクはぎょっとして目を上げた。扉の向こうに何時の間にか大男が立っている。無精髭を生やし、フードからのぞく底光りする目が獣じみて見えた。その男の正体に気付いたサダルメリクは愕然とした。

「お前...榛統也か?」

「ああ、貴方とはパーティー以来だな」

 統也がフードを脱ぐとくせのある伸びかけの髪がかすかにゆれた。彼は、ゆっくりとサダルメリクとの距離を縮めた。