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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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「全く、ゴシップ好きの連中が大喜びしそうな話だこと」

 夫人はひとごとの様に呟き、警部は肩をすくめた。

「夫人、誤解なさらないで下さい。私は別に昔の、しかも極東の小さな街で起こった事件についてどうこう言う気はありません。まあ、ゴシップのネタにはなるかもしれないが、各界に影響力のある公爵一族のスキャンダルを掘り起こすのは賢明ではないと言うのが上層部の意見でしてね。それに貴女のおっしゃる通り十代の子供が巻き込まれた不幸な事件には違いない。
 しかし榛統也はどうなんでしょうね?私が一番腑に落ちない所はそこでした。最初私は、彼と貴女の間に何らかの因縁がありそれが今回の公爵の死に関係しているのではと推測していました。日本に渡りそれは確信に変わりましたよ、榛統也は昔自分を陥れようとした貴女に復讐でもするつもりだったんじゃないかとね。しかしミズキ警部補はそうは考えてはいなかった・・・警部補は言いました。榛統也は終始貴女を庇っていたと、事件の全てが明るみになった後もそれは変わらなかったと。それどころか彼は貴女に、特別な感情を抱いていた様だったと。
 これは、貴女にとっては極めて不利な事かもしれませんね。榛統也は貴女に特別な感情でもって執着し続け、ついには邪魔な公爵を殺した、そういうシナリオだってありえる訳ですから」

「陳腐な筋書きですね。榛統也に直接お聞きになったら如何?」

「残念ながら今は無理ですけどね」

 警部は今度こそ優勢を確信して夫人を真っ直ぐ見つめた。

「彼は公爵殺害の容疑者として指名手配されました。現在行方不明です」