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リンドウノミチヤ
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novelistID. 46892
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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「まあ、ゆっくりと話をさせて下さいよ。私が日本に渡ったのは、公爵邸の殺人現場に居合わせた榛統也についての情報を手に入れる必要があったからです。色々と、面白い話を聞く事が出来ましたよ。
 彼は今でこそ堅気だが、十代の頃は街の不良少年共を束ねていた大ボスだったそうです。その頃の彼には特に目をかけていた少年がいました。そりゃあ人目を惹く天使みたいな美しい少年で、悪ガキ共の中にはその少年と榛統也が特別な関係なんじゃないかと揶揄していた連中もいたらしいです。まあボスを取られたやっかみといったところでしょうね。
 その少年は美しいだけでなく非常に頭が切れて冷酷で、しかも謎めいた存在でした。大ボスの榛統也を筆頭に他の連中を上手い事誑かしたあげく、敵対していた不良グループを壊滅させた事もあったそうです。しかし少年の目的は別のところにありました。天使みたいな容姿とは裏腹に悪魔の素質を持っていたのでしょうね、なんと少年は、非情にも自分を気に入ってた統也に、街で起こった連続殺人事件の濡れ衣を着せようと目論んだのですよ、ええ、自らの犯した殺人の、です。
 そうですよね?公爵夫人?」

 警部は公爵夫人を凝視したが、夫人の瞳にはいかなる動揺も映ってはいなかった。彼女は酷薄とも言える表情と声音を警部に向けた。

「その事件の事なら私も知っています、同じ街に住んでいましたしね。素行の悪い男達がローティーンの少女を暴行目的で拉致しようとした。それは簡単に実行出来る筈でした。しかし少女は反撃し、結果的に男達の内二人を死に至らしめた。完全な正当防衛でしょうね」

「しかし貴女はその後数年間収監される事になった。犯行を目論んだ残りの男について徹底的に調べた上で計画的に殺害したからです。そう、十代の少女がやらないだろうと誰もが思う事を貴女はやってのけた。少年のふりをして榛統也のグループに入り、敵対していたグループに属していた男を、自分を暴行しようとした事に対する復讐として意図的に殺した訳ですからね」