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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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第3章 降臨~Ingrid1




 その日、公爵夫人のオフィスを訪れたのは初老の警部だった。

 彼は先日の公爵の死に対するお悔やみを慇懃に述べると勧められたソファに座り、遠慮のない視線で夫を亡くしたばかりの公爵夫人を眺めた。夫の葬儀を済ませた夫人は翌日には職務に復帰していた。彼女は黒を基調とした清楚な装いで喪に服してはいたが、その白く硬質な顔からはいかなる感情も読み取ることは出来なかった。

(雪の女王。全くその呼称に相応しい女だな)

「日本に行って来ましたよ」

 警部は直球を放った。

「ミズキという、今は警部補になっている男ですが、彼が十年ほど前に担当していた殺人事件について聞くことが出来ました。貴女は勿論よくご存知でしょう・・・何せご自分が犯人として収監された訳ですから」

「それと、今回の面会に何の関係があるのです?」

 動揺の片鱗すら見せず冷淡に返した夫人に警部は内心舌を巻く。彼は恰幅の良い身体を動かしソファに座り直した。