KYRIE Ⅲ ~儚く美しい聖なる時代~
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夫人のオフィスを退室したドラジェンは廊下で秘書のガブリエルと鉢合わせた。
「あの警部の容態はどうなんだ?」
「やっと退院出来るそうよ、あなたも大活躍だったわね」
赤毛の秘書のさばさばした口調を受けてドラジェンは軽く聞いてみた。
「どうやらあんたと同じ職場になりそうだ。今度飲みにでも行かねえか?」
「私を口説きたいならご愁傷様。好きな人がいるのよ、相手がいる人だけど」
「妻子持ちと付き合うより俺がいいだろ」
「いいえ、彼女には妻じゃなくて夫がいたのよ」
ガブリエルはすまして答えた。
「彼女は雪の女王、私の上司。残念ながら想い人がいるから私を振り向いてくれる機会はなさそうだけど」
ドラジェンはぽかんとして赤毛の秘書を眺め、そして照れた様に頭をかいた。
作品名:KYRIE Ⅲ ~儚く美しい聖なる時代~ 作家名:リンドウノミチヤ