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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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 榛統也は事件の後も沈黙を貫いた。

 彼は警察病院で支店長殺害を告白したが何故公爵夫人の誘拐現場に居合わせたのかについては一言も語らなかった。
 支店長の死体は榛統也の供述通り公爵家の領地内にある狩猟小屋で発見された。しかし支店長と誘拐犯達の繋がりを示す物は何一つ残っていなかった。サダルメリクは誘拐犯達との接触を注意深く避けていた為彼等も自分達を雇った男の素姓を正確には知らなかったのだ。
 公爵邸の殺人事件については、支店長が生前企業内で横領をはたらいていた証拠が示された為警察は捜査方針を改めざるを得なくなった。榛統也は支店長殺害の罪で収監された。
 当局はルイ・セドゥ・ヴァイヤン公爵とサダルメリクの兄との繋がりを掴んではいたが、各界に影響力を持つ公爵家しかもラーゲルレーヴの重役が欧州を騒がせているテログループに関与していたと公になる事は賢明ではないと判断し黙殺する事とした。しかし未だ問題は残っていた。サダルメリクの正体を知っていると思われる唯一の部外者、榛統也の存在である。統也の存在が闇に葬られる危険があると気付いた公爵夫人は画策し彼を父、桐永天音の養子にした。それは、榛統也を公爵家ひいてはラーゲルレーヴの監視下に置くという暗黙の宣誓だった。

 数週間後、イングリッド公爵夫人はラーゲルレーヴの会長の座から退く事を発表し重役達を驚かせた。
 とは言っても公爵夫人の基盤は絶対であり、彼女が依然としてラーゲルレーヴにとって重要な存在である事実には変わりなかったが。
 公爵殺人に関わる一連のスキャンダルが彼女の引退の理由と説明された。