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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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太郎!

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「…三枚下ろしじゃダメか、いっそ村の宝の金棒でタタキにしてやった方が良いか。」
「せめて原型を残してくれよ。」
「じゃあ踊り食い。」
「訳が分からないよ。」

会議を飛び出した太郎を追って静香が太郎の家に入ると案の定仰向けに寝っ転がっている。
ただ単に怠け者ではなく、太郎が考え事をする時の癖なのだ。
普段は山を駆け巡って弓を射る、猟師としては横になれる時間が少ないからこんな癖がついたのかもしれない。

「それで、お前本当に村を出てく気か?」
「まぁ確かに奴等と会いたいって言ったのは本音なんだが、別の理由もあるんだ。」
「どんな理由だ、理由によってはタタキからシバキに変更しても良い。」
「タタキもシバキも俺はどちらにせよ死なないかい…?」
「早く。」
「はいはい、俺はいっぺん町の様子が見てみたいんだよ。」
「………何のために、か。」
「静香も分かってるだろう、町の連中は俺達と比べればなまっちろいし、身長も全然違う。だけど持ってる武器が全然違う、飾りが立派かはともかく弓も刀も段違いだ。俺はいっぺんそんな奴等の生活を見てみたくてな。」

天井を見ながら太郎はぼうっと呟いた。
初めて町の人々が村に意思を伝えに来たとき、なぜ村人は大人しくそれを聞いたのか。
それは別に村人が温厚だからではない、村人は相手の強さと自分達の強さを目で見て、どちらが強いか悟ったからだ。
それほど、武器が段違いだった。

「だから戦いに行ってやる、とかじゃなくて俺の興味の為、納得した?」
「町の連中の意見と同じくらいには。」
「つまりまったく理解したくないってことだろそれは…」

肩を落とす太郎。

「まぁ確かに小刀があって熊と鹿と兎さえいれば良いって言ってるような静香にはきらびやかな着物も関心なんてヒイッ!」

村の中でも豪胆と言われる太郎が悲鳴を上げる理由など少ない。
その稀な理由は、今小刀を太郎の手スレスレに投げつけた静香であったりする。
静香は完璧な笑みを浮かべたまま。

「何?太郎?何か私に言いたいことがあったら言って良いのよ?」
「何もありませんです。」

口調が非常におしとやかになるのは怒っている証。

「ともかく、都に一人なんて危なすぎる。俺も行く。」
「えぇ~静香が行っても着いた途端言い寄られて、その男返り討ちにしてヒギャアッ!」
「な、に、か?」
「分かったよ、連れていけば良いね、連れていけば。…まったくかすったぞ今のは。」
「都行くまでにそのノロマは直しておけよ。」
「都では物陰から物凄い速度で小刀が飛んでくることは無いと思う、治安的に多分。静香もその口調直しておいた方がいいね。」
「俺自身は俺に従うんだ、忠告は聞かんよ。」
「…やれやれ。」

静香は静香で着飾れば綺麗なんだろうけどなぁ、と太郎は思いながら体を起こす。
何にせよ、静香も連れていかねば自分が膾になってしまうと太郎は判断。
その上でこう聞く。

「いつ行く?」
「今だろ。」

「いや、ちょっと待って待って用意は?」
「…用意や臆病といったしがらみがお前の行く気を邪魔している、じゃあいつ行くか。」
「今で…危ない乗せられる所だった。ともかく、今はまだ村の人達からもきっと見張られてる。明日だ明日。」

この言に静香は何だかんだと不平を述べながらも結局は従った。
もしかしたら太郎の気をほぐしてくれたのかもしれない、静香なりに、太郎はそう思うことにしてひとまずは目を閉じた。

とにかく明日になってからだとでも言うように。



◇◇太郎!◆◆

作品名:太郎! 作家名:瀬間野信平