太郎!
「このたび、我ら一族がこの地に港を築くにあたっての祝杯を!」
声が湧く、どうやらどこかの気前の良い者が酒を一樽開けたようだ。
「それにしても入道殿もよくここを見つけたものですな、人もあまりよりつかぬ場所だそうですが。」
「あぁ何でも入道様の家来が言うには、何故だかここには立ち寄らぬ方がいいという噂が近隣の村からあったそうだぞ。」
「何だ、幽霊でも出ると言うのか?」
祝いの席にいる侍らしき二人は声を上げて笑うと会話を続ける。
「幽霊に似て、いや、もっと我らの身近にあった者共かもしれませんな。」
「ほう、それというのは?」
「何でもあの島には」
「鬼が住むとか。」
笑い声が響く。
一昔前ならば悪い冗談だ、ただ今となっては笑い飛ばされる冗談に過ぎない。
以前の関係を改善し、相手を懲らしめてその相手がどうなったのかは知りはしない。
ただただ今自分達が追いやる者達が古い迷信にすがることを笑い飛ばす。
その姿は善か悪か、誰にも決められはしない。
しかし、繰り返そう。
これは、普通とは違う、『アルモノ』の勧善懲悪物語。