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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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切り戻し

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真理は授業中にこの所たびたび保健室に行くようになったと、担任からの連絡が、連絡帳に書かれていた。ストレスなのかなんなのかは本人もはっきり言葉にしないと言う事であった。君江はもしかすると生理ではないかと感じたが、うかつには真理に訊けなかった。
 数日して、養護教諭から電話があった。
「今日も保健室に来ました。持病とか小さな時にどんな病気になったかを知りたいので、用紙を持たせましたのでよろしくお願いいたします」
君江『はい』と返事はしたものの、真理の事は何一つ解らない。純一も仕事だけをしていた親であるから解るはずもないに違いない。また有香に頭を下げて記入してもらわなければならない。それが何としても君江には耐えがたかった。
 5月になり、離婚してから2度目の母の日が来る。純一と真理の2人で、1度目はカーネーションの鉢植えを持参した、会ってはくれなかった。その時の純一は冷たい女だと思ったが、あとになり冷静になれば、有香の気持ちも解る気がした。
 純一は有香に電話し、記入してくれるように頼んだ。やはり自分だけで立派に育てられるつもりであったが、真理の事を何も知らないことに、今になって初めて育児をしなかったことを悔やんだ。もし、母の言うように生理であれば、とてもその説明はできないかもしれない。
 真理は毎日毎日大きくなる。勉強は教える事が出来たが、真理の心の負担を純一では取り除いてやることはできないかもしれない。
 封筒で問診票が送られて来た。便箋に一言『ごめんなさいね真理』と書かれていた。
 明日は母の日である。また真理は辛い思いをするだろうと純一は思った。
 庭には皐月の白や赤の花が咲き始めていた。

作品名:切り戻し 作家名:吉葉ひろし