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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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切り戻し

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 真理は春の運動会が気になっていた。パパはまた来てくれないだろうと思うだけで、あれほど駆け足に自信があったのに、練習さえ嫌になっていた。放課後になり、クラスの子たちに練習に校庭に行こうと誘われたが、あまり行く気にはなれなかった。でもせっかく声をかけて貰ったのに行かなければ、仲間外れにされるようで断る事も出来なかった。
 校庭に行くと石灰の白いラインが引かれていた。大きな楕円形だった。去年の運動会を真理は思い出した。リレーの選手で走っていたことを・・お弁当をパパとママとおじいちゃんやおばぁちゃんと食べた事も・・・
「一緒に走ろう」
とかおるちゃんが言った。
「お腹が痛いから少し休んでから」
真理はそう言って砂場に行った。砂場には同じクラスのみゆきちゃんがいた。
真理はみゆきちゃんも運動会が嫌いなんだと知っていた。みゆきちゃんは足が不自由で掛け足が遅かった。
「みゆきちゃん遊ぼう」
みゆきちゃんは黙って頷いた。そのほっぺには砂が付いていた。
「なにつくってるの」
「砂だからお山だけしかつくれないよ」
「私もつくろう」
真理は砂山を作り始めた。
いくら砂を重ねても崩れてしまう。大きな山を作るには大きな土台を作らなければ出来ないことをこの時真理は知った。それは、みゆきちゃんの大きな砂山を見たからだった。
みゆきちゃんはきっと前から砂遊びをしていたのだろうなと真理は思った。
「みゆきちゃん私と一緒にリレーに出てみない」
「みんなの迷惑になるよ」
「大丈夫、真理がその分走るから、練習してみようよ」
真理はみゆきちゃんの手を引いてグランドに出た。
作品名:切り戻し 作家名:吉葉ひろし