(仮タイトル)
一月珠希
彼女のことは入学してから割と早い時期から知っていた、というか一番最初に顔と名前を覚えたのは彼女だった気がする。
彼女に対する第一印象は「目立っている」だった。
いや、「目立っている」というと少しニュアンスが違う、「浮いている」と言った方が正しいかもしれない。
決して彼女が物理的に浮いていたわけではないし、突飛な服装や髪形をしていたわけでもない。(ちなみに顔は結構可愛い、髪はサラサラロングで綺麗だと思う)
その第一印象が気になって数日彼女をよく見ていたが他の人と変わらない普通の女の子だったので僕の感性というものはまったくもって的を外しているなと思ったものだ。
今になって考えてみると単に彼女の外見が僕の好みど真ん中だったのでそんな第一印象を持ったのではないかという気もしてくる。
そんな風に彼女のことを考えながら、さっき彼女とすれ違った時良い匂いがしたなぁとか思い出しながら歩いていたおかげかいつの間にか山頂付近まで来ていたようだ。
「さっき頂上までは行かない方がいいって言われたけど、どうするかな」
足を止めてそのまま登っていくかを一応は考えてみる。
もともと山頂に用があるわけでもないし山頂には何か危険があってそれに巻き込まれないようにするために彼女が僕に注意をしてくれたのかもしれない。
だとするとこのあたりで引き返すという選択肢もありだ。
ありなのだが、そんな危険があるとかそういうわけではなく、単に彼女が思いつきで言ってみただけの可能性もある。
もしそうだとしたらその言葉を真に受けて山頂まで行かないというのはなんだか癪だ。
「危険があるんだとしたらその危険を秘密にせずはっきり言うだろうし言ってみただけって可能性が高そうかな」
そう口にしてみると一つのワードが引っかかった。
「ん?秘密?」
そうか!彼女は山頂になにか秘密の隠し事をしていてそれを僕にばれないようにするためにあんな事を言ったのか!
「秘密かぁエロい事かな?」
秘密=エロい事という発想が残念なうえにエロい事だと思うと妄想が広がってもうそれが正解だと確信してしまう僕の脳みそはもう心配になってくるレベルだった。
しかしそんな心配は妄想でいっぱいの僕の頭からは吹っ飛んでしまう。
「そうだとすると善は急げだ!早く山頂に行って一月さんの秘密を暴かせてもらおう!」
駆け足気味で山を登っていく僕。
いや、人の秘密暴こうっていうんだから善ではなく明らかに悪なのでまわれ右してくださいって感じなんだけどね。