Thin Ice
動揺して気が付いたら省吾の部屋のインターフォンを鳴らしていた。
突然アポも取らずに来たのに、何も言わず部屋に入れてくれた。
「ソファーに座ってろ、今お茶煎れてやるから」優しく肩を叩いてキッチンに向う省吾。
言われたままに半ば放心状態でソファーに蹲る。
黙って蹲っている俺の手にマグカップを持たせる。
ブランデーの香りがする紅茶。
「飲めよ。少しは落ち着くぞ。」
凍てついた身体も心も溶かされて行くようだ。
知らず知らずにまた柄にも泣けてくる。
どうして省吾の部屋に来ると俺泣いてばかりいるんだろう?
俺はガキか。情けなくなってまた涙が出てくる。
省吾は俺が泣き止むまで、黙って隣に座って肩を抱いていてくれた。
「落ち着いたか?」
「俺、ガキだよな。なんでここに来ると泣いてばっかしいるんだろ?」
「いつも泣いた事なんか無いのに。だろ?」
「うん」
「泣ける場所があっても良いだろ?」
「省吾さん、どうして俺に・・・」
「わかんないか?」
省吾は俺を胸に強く抱きしめて
「お前が好きだからだ。」と耳元で囁いた。
好き?俺が?・・・・
「灯也、時間をやるから、意地を張らずに素直になれ。」
省吾は囁くと部屋を出て行った。