宇宙を救え!高校生!!
「これは・・・・・」
受け取ったカードを開くと、左半分に白く可憐な押し花、右半分には手書きで、僕の名前と生年月日が書かれていた。
「それはね、大和君の誕生のお祝いにお母さんから頂いた物なのよ」
女性は、昔を懐かしむような目をして、僕の手の中に有るカードを見つめた。
「大和君のお母さんは、お花がとっても大好きだったから、その押し花も、お庭で摘んだお花でお母さんが作ったそうよ」
僕は、改めてカードを食い入るように見つめた。
そこに残されている、母の痕跡を一つも見逃さないように。
「それと、私はお役に立てなかったけど、大和君のご両親ととても仲の良かった画家の男の人がいるの。良かったら住所を教えるから会ってみたらいかが?」
僕の顔を、下から覗き込むように見て、女性がそう言うと。
「はい! 是非お会いしてみたいです!」
顔を上げ、目を大きく見開いて、明るい表情で僕は答えた。
もうあまり時間は残されていないけど、まだ希望は続いている!
「分かったわ。ちょっと待っててね」
女性は、再び足早に奥の部屋へと消えると、今度は直ぐに戻って来た。その手には分厚い本を抱えていた。
「えーと・・・・・・」
ドスン! とその本を窓際の光が差し込むテーブの上に置くと、ぱらぱらとページをめくり始める。
分厚い本はアドレス帳だったのだ。
「えーと・・・確かこの辺よね・・・・・。あっ、メガネ、メガネ」
胸のポケットから丸いフレームの眼鏡を取り出すと、ちょこんと鼻の上にのせる。
(やっぱり結構なお歳なんだなー)
と、その一連の動作を見守りながら、改めて、女性の見た目の若さに驚いていると。
「あったわ!」
本のページをガラスのペーパーウェイトで押さえると、テーブルの引き出しを開けてペンとメモ取り出し、サラサラと書いて僕へ差し出す。
「はい。この人に会ってみて。お父さんお母さんが一番懇意にしてた人だから、きっと何か知ってると思うわよ」
「有難うございます!」
メモを受け取ると、僕は深々と一礼した。
「あら。お礼なんていいのよ。大和君、雰囲気がどことなく愛花に似てるわ・・・・」
しみじみと、懐かしむような瞳で僕をみる。
「今日は、大和君に会えてほんと良かった」
その直後。女性は突然僕をぎゅっと抱きしめた。
「えっ・・・・」
突然の事に僕がドギマギしていると。
「ごめんなさいね。何だか愛花に会えた気がしちゃって」
女性は、僕を抱きしめていた腕をそっと離すと、ペロッと舌を出して笑った。
「・・・・・・・・・・・・」
僕の心臓は、はち切れんばかりにドキドキしていた。あまりに突然の事だったし、彼女、見た目はどう見ても十代なのだ。
それに、女性に抱きしめられたのも、初めてのことだった。
とても良い匂いがした。
柔らかい花の香りに似た、気持ちがやすらぐ・・・・・。
もしかするとお母さんも、こんな匂いだったのかな?
想像すると、なんだかとても嬉しくなっていた。
作品名:宇宙を救え!高校生!! 作家名:葦藻浮