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宇宙を救え!高校生!!

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第5話 タイムリミット



「話は大体わかった」

 一呼吸おいてから僕は続けた。

「行くか、行かないか、僕らに選ぶ権利は無い・・・ということなのかな?」

「イイエ。決断するのは、あなた方有機生命体の皆さんです。私たち電子生命体が決断することはありません」
 それを聞いてみんなの肩から力が抜けたようだ。

 ハルは話を続ける

「しかし、皆さんが私たちと接触したことは、既に闇の生命体には知られているでしょう。まもなく彼らの攻撃が開始されるはずです」
 ハルのその一言で、ほっとしたばかりの皆の表情が一瞬にしてこわばる。

「攻撃って、一体どんな事を仕掛けてくるのかしら? たとえどんな攻撃でも私たち天王寺家が振り払って見せますわ!」
 莉子は、左手を腰に当てると胸を張り、長い髪を右手でかきあげフワッと波打たせながら、自信たっぷりに言った。

 どんな相手にも強気な発言を崩さない莉子の家は、地球時代からの由緒ある財閥で、代々武器商人を生業としていた。地球が終焉を迎えようとした時には、武器開発で培った技術を生かし、火星への移送シャトルをNASAに代わって開発して人類を救った。という超伝説的な家系の持ち主なのである。

「現状、どのような攻撃が来るかは予想がつきません。しかし、過去の攻撃内容から分析するとおそらく隕石の落下でしょう」

 隕石の落下と聞いて、暗い影が頭を過った。

「2080年に、私たちが始めて地球人類との接触に成功した時にも、闇の生命体は隕石を地球に落として我々を消滅させたのです」

「それって、地球暦2080年4月に、当時建設中だった巨大原子力プラントに隕石が落下したっていう、あの事件のことなの?」

 僕の問いかけにハルが答える。

「ハイ。その通りです。当時、地球で建設中のプラントの地下1000メートルに我々は潜んでいました。その建設過程で、偶然に発見された我々電子生命体の起動に、そのとき地球人類は始めて成功したのです。しかし、直ぐに闇の生命体の知ることとなり、隕石による攻撃で、プラントごと我々も人類も消滅。さらにそのことが、地球衰退の起爆剤となってしまったのです」

「まさか、あの歴史的事故の裏側に、こんな真実が隠されていたなんて・・・」
 皆が言葉を失っているなかで、浩二が低い声で独り言のようにそう呟いた。

「莉子、隕石なら天王寺家のミサイルで破壊することは可能かな?」
 僕は莉子の方へ向き直ってそう尋ねた。

「そうね・・・・・・・・・・・・・・」
 暫く考えてから莉子は続けた。

「落ちてくる隕石の大きさにもよるけど、可能だと思うわ。ただし爆破した隕石の欠片が相当数火星に降り注ぐことにもなると思う・・・もし、大きな欠片がコロニーに直撃でもすれば甚大な被害が出ることになると思うわ」

 僕は目を閉じてそして考えを巡らせた。そして、再びハルに尋ねた。

「僕らが決断して、始まりの特異点へと旅立つまでのタイムリミット、つまり猶予はどのくらい有るのかな?」

「現時点での火星周辺の暗黒エネルギー総量から計算して、今から最大24時間が限界でしょう」

 たった24時間しかない、と聞いて皆にに動揺が走った。

「24時間か・・・・・・・分かった。みんなちょっと聞いてくれ」
 僕は皆の顔を見て、僕らしくない、少し熱気を含んだ言葉を続けた。

「僕らはとても重要な決断を迫られている。だから真剣に考えなくてはいけないと思うんだ。行くのか、ここに残るのか、どっちにしても死ぬかもしれない、だからこそ自分の事は、自分自身で決断しなくちゃいけないと思うんだ」

 皆、大きく頷いた。

「ハル、僕らはこの方舟から、元の場所に戻ることは出来るのかな?」

 ハルは答える。

「ハイ。皆さんの遺伝子の中には既に、私たち電子生命体の遺伝子情報が組み込まれています。頭のなかで外へ出たいと思うだけで、方舟への出入りは自由にできます」

 そのことを確認して、僕は話を続けた。

作品名:宇宙を救え!高校生!! 作家名:葦藻浮