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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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憑くもん。

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是非、さっきよりむしろ混乱してきたから。
とれかかった傷口の絆創膏を押さえながら胡座をかくと、その子もぺたんと座った。

「えっと、どこから話しましょう。まずは背後霊ってご存知ですか?」
「一応。でも俺には霊感もないしこんな風に見えたのは始めてだが。」
「普通は見えませんよ、霊ですもん。」
「じゃあ何故、今は普通じゃないのか?」
「まぁそうです。実はこの頃、人々からの霊への信頼が薄くなってきてるんです。」
「何か問題が?」
「大ありです!人々が霊への信頼を失うって事は霊を忘れるという意味ですから!忘れられれば、元々人の考えから生まれた私達は消えざるをえません。もう、憑り主さんがさっき言ってたような事でも最近の人は全然しませんからね。」

そう言う自称背後霊は寂しそうだった。
俺が言った当たり前のような、世話になった物への別れの言葉も、最近の人は言われないのだろうか。
それが本当なら寂しいだけで言い表せる気持ちではないだろう。

「そこで日本霊魂委員会で、霊を信じる人にだけ、色々な霊を凝縮して、憑けてあげる事になったんです。霊を信じてくれる人なら大事にしてくれます、それにこれ以上私たちが忘れられる事もなくなります。要は企業合併、かるてる、とらすと、こんつぇるんですよ!」
「おいおい、意味分かって使ってるのか?」

経済用語を言うとき幼稚園児が新しい言葉を覚えたように言っていたためつい、言ってしまった。
というより日本霊魂委員会なんてあるのか、なんか話がだんだん大きくなってきた。

「そこはかとなくバカにしてません?」
「いえ、どこも。」

少々棒読み。

「とりあえず進めますよ、凝縮した霊というのは悪いことは基本的にしません、霊といっても守護霊とか背後霊とか、悪霊の類いではないのです。」
「それで君は背後霊だと?」
「私は背後霊、それと九十九神(つくもがみ)のミックスですよ。だからこうして姿を現せるんです。」
「?」
「九十九神って他の霊とは違って条件付きで実体になれるんです。勿論完全に人間の形にはなれないんですけど。」

背後霊の少女はそう言いながらくるりと後ろを向く。
そこには小さいがふわふわした尻尾が生えていた。
何故尻尾かは知らないが、これが『完全に人間の形にはなれない』という事のようだ。

「ちょっと引っ張ってみていいか、付け物の気がしないでもない。」
「え、今なん」

構わず引っ張る。

「ひゃん!」
「強すぎたか、でも付け物じゃないな、コレ。」
「いきなりレディーの体に何するんですかッ!セクハラ!セクハラ!」
「大丈夫、俺にロリコンの趣味はないから。というか君は霊だから性別無いんじゃないのか?」
「あります!!ちゃんとした女の子です!というよりロリコン以前の問題です!」

顔を真っ赤にして殴ってくるが座ったままなので、腕が短く届かない。

「とりあえず、話を進めてくれ。何で君は現れたんだ。」
「…後で呪いかけますからね…えと、現れた理由は簡単。九十九神は依り代がなくなってしまうと姿を表してしまうんです。私は雑種ですけど、純粋な九十九神だと現れた瞬間消えちゃうんですよ。依り代がもうありませんから。私は背後霊でもあるので消えないで現れただけですが。」
「でもそれなら何故皿を割った瞬間に現れなかったんだ、九十九神ならそうなんだろう?」
「だって最後に供養してもらうまで霊を信じてくれるかは分からないですもん、最近の人間はだから嫌いですよ。」

頬を膨らましてソッポ向く背後霊兼九十九神(自称)。
そうしているととても突っつきたくなるが先ほど尻尾で叱られたばかりなので止めておく。
成る程、だから俺が供養した時にいきなり現れて、その上見覚えが無かったのか。
今までのことに納得はこれでいく、だがしかし

「まだリアリティーに欠けるぞ。」

そう、いきなり幽霊などと言われてもにわかには信じがたい、人じゃない証拠が先ほどの尻尾だけでは少ないと思った。
ただそれも少女にとって言われるのは予想済みだったようだ。

「…尻尾見せたのに?」
「あれは確かにそうだが…他にもう少しないか?」
「見せたら霊、信じますか?」
「今度こそ。」
作品名:憑くもん。 作家名:瀬間野信平