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箱舟(RDG 未来捏造)

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バルカは後悔していた。赤い石の壁には成績が貼り出されている。
バルカの名前は上から二つ目に書かれていた。
(しまったな。力加減が分からなかった。)

自分を少し遠巻きにして何人かの生徒がひそひそと話をしている。

(どうせ、奴隷の分際で…とか、そういうくだらない話だろう。)

今さらどうすることもできないこの状況で、鼻にかけず、かといって下手にも出ず、飄々としているしかないと、バルカは思った。

「ねぇ、あなたが、2番のバルカくん?」
振り向くと、飴色の髪をした女のコが立っていた。
少し気が強そうだ。
「あぁ。バルカは俺だけど。何か?」
バルカの愛想の良い言いぶりに、彼女は眉をひそめて、ふんっと鼻を鳴らした。
「あなた、本気は出していないんでしょう?」
「いや…俺は、実力をきちんと出し切ったつもりだけど。」
「ふぅん。…あなた、元は奴隷だったと聞いたわ。イシス内務大臣の処にいたのを、高位の神官に売られて、ここに来ていると。」

大人しく無難に過ごそうと決めた矢先だったが、バルカは、ここまで言われて大人しくしているような少年ではなかった。
「…この国は、実力主義だ。国籍や身分は問われない。先代の治世では奴隷あがりのギリシャ人が大宰相まで登りつめた。貴族院は確かに決議機関かもしれないが、そこに上がる法案は官僚が作ったものだ。官僚達は貴族達に具合の悪い一切のものを触れさせないことだってできる。」
「ええ。そうよ。この国では実力がものを言う。このアカデメイアでも同じだわ。だから、みんな、あなたを無視できないのだし、私もそうなのよ。」
バルカの本音を引き出せたことに少女は、得意気な笑みを浮かべる。
「素直な子どもを演じてみてもムダ。少なくとも私とは正々堂々と戦ってよ。」
「…何をそんなに熱くなっているんだ?」
「…あなた、知らないの?このアカデメイアで選ばれた人間こそが…!」
「な、なんだよ?!選ばれるとどうなんだ?」
彼女は、開いた口を慌てて紡ぎ、逡巡した。
「やめたわ。ライバルにわざわざ教えてあげるほど、私、人がよくないの。」
勝手につかかってそれはないだろうと思ったが、彼女はくるりと翻り立ち去ろうとしていた。
「…ちょ、あんた、名前は!?」
「ユラ!」
女のコにしては、相当な速度でさっさっと行ってしまった。