ようこそボクの部屋へ…ダレ?
ふと、さっきのイモムシを探した。
そんなに遠くへと進めるはずはないけど、何処に隠れたんだ?
ボクは、もう一度ビニールの中や 置いてあった下を探したが、見あたらない。
踏みつけないかと、床をきょろきょろと見渡した。
そして、ボクは見つけた。いや、そう言っていいものか……こんなことが起きていたなんてと目を覆いたくなる。
『なんだい?ちょうど腹も空いた頃だったんだよ。まあ、これも自然というものさ。気にすることはない』
とでも言っているかのように 大顎を揺らしている。
なんてことしてるんだよ。しかも ボクの部屋の、ボクの目の前で……ああ、自然って言うなよ。
せっかく 此処で会ったんじゃないか。まだ これから羽ばたこうという前にそんなことってないだろ。
大きく鎌を持ち上げて そいつの体をがっちりと挟むように掴み、かじりつく。
そいつの体液が、鎌に垂れ落ちて、もう半分ほどしか残っていない。
ボクには、もう助けることなどできない。その代わり それを見届けてやることにした。
悲しいという感情を持っては可笑しいかもしれない。ボクだって 生きる為に食べるのだから。
『ごちそうさん。旨かったぜ。最期まで感謝してるよ、オレの為に命を捧げてくれてありがとうよ』
とでも言っているかのように 鎌についたそいつの体液をきれいに舐めている。
食い散らかしたのなら、今すぐにでも追い出し、駆除の薬をかけてしまおうかと思ったが、カマキリは、跡形も残さず、鎌までも手入れして食べ尽くしていった。キライだったカマキリを少しだけ、見直したよ。
あ、出ていくのか? そいつは飛ばない翅を広げて見せて窓から出て行った。
その後、窓の下の植え込みの枝に卵が付いているのを見つけた。
なんと小さなカマキリが 卵から溢れるようにいるではないか。
きっと産卵し、卵を守り、やっと空いた腹を満たしたかのようにボクは、想像した。
じゃああれは、雌だったのかなぁ。雄は、もしや食べられたのか、それとも逃げたのか。
いずれにしても家族作り、それを守る。これも自然のできごとなのだとボクは思った。
作品名:ようこそボクの部屋へ…ダレ? 作家名:甜茶