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ようこそボクの部屋へ…ダレ?

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とうとう現れたか。どうかそっとお帰り頂きたい。
ボクは、そいつの名前を知らないけれど、『蜂』という事だけはわかる。
いやこの蜂の名前くらいは何となく知っているぞ、『アシナガバチ』だ。
とはいえ、それ以上の 何とかアシナガバチっていうのは、わからない。まあどれにしても『蜂』だ。

いつだったか この部屋の居心地が良かったらしく棲みつかれたことがあった。そう、部屋の中に蜂の巣を作られたのだ。
暑い日だから部屋に来たのかと思っていたら、激しい雨やら日照りやら天候不順な年だった。
何処にそんなセンサーをしまっているのかと思うほど、彼らの行動には感心する。

ぼんやりしてはいられない。蜂が目の前を横切った。

『まてっ!ヒラヒラめー』

とでも言っているかのように 部屋の天井近くに舞い上がった蝶のほうへと向かって飛んでいくではないか。
ボクは、蝶を守ってやる術がわからずに ただ見ていることしかできない。ごめんよ。
しかし、そんな心配はしなくても良さそうだ。
寄っては離れ、多少よそよそしくもお互いに興味のありそうな…そうご近所付き合いのような距離感があるように思えた。

『よう、相変わらず ちゃらちゃら飛んでるなぁ』と蜂が声をかける。
『まあ、失礼ね。あなたも相変わらず。みんなを怖がらせているんでしょ』と天井にとまった。
『勝手に追い払うからだ。オレは ただ獲物を探して仲間に知らせようと飛んでるだけなんだぜ』ときらりと目を輝かせ、スレンダーなボディで気取って答える。
『あなたがたも お花の蜜をいただけばよろしいのに。美味しいのよ』
『けっ、ミツバチみたいにか?』
『あら、同じじゃないの?』
『同じにするな。オレは……』
『ねえ、何処から出たらいいの? もうわたくし困ってしまってますの。あ、ちょっと蜂さん』