ようこそボクの部屋へ…ダレ?
あ、モンシロチョウ。
蜘蛛に気を取られていたあいだに 蝶が部屋に舞い込んできたのだ。
さきほどの蝶だろうか。
『 窓から 少しだけ見るつもりだったのに そよ風さんに押されて入っちゃったわ。どうしましょう』
とでも言っているかのように 部屋の真ん中を慌てて、羽をバタつかせていた。
すると、疲れたのだろうか、ボクの服の掛けてあるハンガーに止まった。花柄のシャツに蝶のデザインが似合ってる。
きっと、フローラルの香りの柔軟剤に誘われたのだろう。ボクは、その様子を部屋立ったまま見ていた。
しかし、なかなか飛び立たない。キミの行き先は 此処じゃないだろうと少し笑みも零れてしまう。
小さなお姫様が、うたた寝をしているような想像を 頭の何処かでしているようだった。
起こしては可哀想だね。安らかな眠りの中で どんな夢を見ているんだい。まったく滑稽な想像だ。
『あらっ、ごめんなさい。いつの間にか眠ってしまっていたみたい』
やっと頼りなくゆらゆらとそのシャツから飛び立った。
一曲ダンスでも踊ろうか。優しげな動きに可愛い妖精が宿っているように感じた。
その時だ。
ボクの耳元に、寒気のする羽音が横切った。
あっあれっ アイツだっ!
作品名:ようこそボクの部屋へ…ダレ? 作家名:甜茶