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ようこそボクの部屋へ…ダレ?

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ボクは、部屋の中に視線を戻した。
すると、部屋にいたのは……体の何倍もある長い六本の脚で 床の上をゆったりと散歩しているヤツがいた。
ボクは、そいつの名前を知らないけれど、『蜘蛛』という事だけはわかる。

何処から来たんだ? 羨ましいほど、脚が長いんだな。
ボクは、その小さな命を奪ったりはしないし、無理に追い出しもしない。
それに、こいつらは、何もしなくても勝手に出て行く。気まぐれ系の思想の持主たちだ。
でも、もう少し早く移動してくれないか?ボクは、キミを踏みつけたくはないんだ。
ボクは、ポストから取り出してきた薄い情報冊子で、蜘蛛を掬うように追い立てた。

『なんだい。ジョギングはしたかないんだよ。ちょっとあちらの窓まで行くのに 此処が近道なんだよ』

とでも言っているかのように 部屋の真ん中を慌てる素振りも見せず 悠々を歩いて行く。
情報冊子で押した所為で、二、三度ちょこちょこっとステップを見せてくれたが、またマイペースな足取りで向こうの壁まで辿り着いた。
だが、外に出て行く様子ではない。
おいおい居座るなよ。此処はボクの部屋なんだからな。と睨みをきかせても『あ、そう』くらいにしかその姿は反応しているように見えなかった。