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エイユウの話~冬~

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「いえ、誰かに呼ばれたそうです」
「誰かって?」
「解りません。誰かです」
「女の子?」
 秋祭り中は金髪迫害思想も薄れる。キースの綺麗な面立ちや、柔らかな物腰はアウリーでなくともひきつけられる女の子はいただろう。事実、キースは隠れたところで人気がある。
 さりげなく小さな質問だったのだが、途端にアウリーが不機嫌になった。
「もうっ!なんでラジィまでそんなこと言うんですか!」
 アウリーは可愛らしく頬をプクッと膨らませると、勢いよくラジィの隣に座った。どうやらキサカが踏んだ爆弾はこれだったらしいと、遅いながらにラジィは気付く。
 吹奏楽部の演奏している音に、二人は耳を済ませた。音楽再生機器は学校にもあるのだが、秋祭りの後夜祭では伝統的に使っていない。しかも部活動が盛んではないこの学園で、吹奏楽部が活躍するのはこの場しかなく、そのため彼等も音楽機器に変えられぬよう絶え間ない努力を重ねているのだとか。
 流れているのはクラシックでもダンスミュージックでもなく、ただの流行曲だ。後夜祭はペアで踊る人が多いのは事実だが、基本的には思い思いの踊りをしていい場となっている。結局のところ、友人とみんなでわいわいと遊ぶ人のほうがずっと多い。また、戦闘職種の専門学校なだけに男女比も激しく、フォークダンスなどにしてしまっては、男同士で踊るペアが出てしまうのである。
 楽しそうに踊る仲間を見ながら、ラジィはつぶやく。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷