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エイユウの話~冬~

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「あれ?キサカは?」
「知りません!門のところにいましたけどっ」
 知っているではないか。ラジィは笑いそうになった。しかし、アウリーが怒っているため、話題としてはそこで打ち切った。彼女の様子に物珍しさを覚えながら、ラジィは門のほうに目を向ける。しかし、こちら側からキサカの様子を知ることは出来なかった。
 遠くを見る彼女に、アウリーがおどおどと話しかける。
「あの、キース君なんですけど・・・」
 言われてラジィは思い出す。キースのことをすっかり忘れていたのだ。アウリーはこれを告げるためにここまできたというのに。
 ぽかんとしたラジィに、アウリーも思わず言葉を止めた。が、あまりにその時間が長いので、彼女は一応伝えてしまうことにした。
「あの、キース君は遅れてくるそうです」
「・・・どっかで転んだの?」
 人ごみの多さから考えたのか、キースの隠れたそそっかしさから導き出したのか、ラジィはそう尋ねた。発生した要素のつかめなかったアウリーは、その要素を探しながら答える。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷