エイユウの話~冬~
「たしかそうだけど・・・」
キサカに肯定されたアウリーは、彼の腕を開放すると、わたわたと忙しなく動き出した。
金髪迫害思想が蔓延しているこの学園内で、キースの魅力に気付けるのは自分だけだと過信していた。キースのよさなら自分が一番よく知っているはずだったのにと、さっさと行動に移さなかった彼女は深い後悔の渦に呑まれる。
混沌とした空気に包まれていく彼女は見るに耐えなくて、キサカは思わず事実を告げた。
「心配すんなって、クールだから」
「・・・へ?」
クールとは、キースの契約魔であり、たしかに雌の黒豹だった。動物に対して女の子という表現を使うなとは言えない。怒るに怒れないもどかしさをそのまま行動に出した彼女は、大きく息を吐いた。キサカはついそれを面白いと見てしまう。こういうところが彼の悪戯好きたるゆえんだろう。
アウリーはキッと恨めしく彼を見てから、ラジィが座っているほうへ走っていった。
「ラジィ!」
人混みの中なうえ鈍足な彼女が、名前を呼んでからラジィの元にたどり着くまで、少々時間を要した。駆け寄ってくるアウリーをとらえたラジィは、立ち上がらずにのんびりと彼女を待つ。
やっと来た彼女に、ラジィはきょろきょろと周りを見た。