エイユウの話~冬~
「・・・どうかした?」
「何が?っていうか、そのリンゴどうしたんだ?」
「あ、いや・・・アウリーが持ってきてくれたやつだけど・・・」
「まじかよ!いつの食ってんだ、お前」
「いや、保険医の人が時間を戻してくれて・・・」
完全に話を戻し損ねてしまった。キサカがけらけらと軽快に笑うので、余計聞き出せなくなり、ハハハ・・・と乾いた笑いをしてしまう。少しわざとらしいそれに、キサカが気付いていたかは解らなかった。
ひとつリンゴを渡すと、キサカはなんてことのない話をしてきた。終始違和感が消えなかったものの、久々の友との会話をキースは心から楽しんだ。
一時間くらいたったころ、キサカは立ちあがって伸びをした。
「さ、次の時間は必修あんだよな」
「そっか」
残念そうに言うと、キサカはパンパンとキースの背中を叩いた。力加減が適当でなく、少し痛いくらいだ。そんなことも珍しくて、もういてもたってもいられなくなった。
「キサカ」
「安心しろって、絶対出してやるから」
「そうじゃなくて!」
久々に声を荒げると、その反動でキースは咳込む。「何やってんだ」とふざけた様子で、キサカは彼の背中をさすってくれた。しかし、パシッとその手を払う。その行為に、キサカは目を丸くした。咳の反動で出た涙で潤んだ目で、彼を睨みつける。