エイユウの話~冬~
「キース君は、ゴパスじゃないでしょう?」
予想しなかった単語の登場に、ラジィは目を丸くさせた。ゴパスなんて、教科書に載っているのを読んだくらいで、恐竜レベルの生物だ。実在するという証拠があっても、実在したという感覚がない。
しかし、ゴパスと言われると。全て納得がいった。
ゴパスに関する説明は先述したばかりだが、この学園での「ゴパス」という単語は、さらに別の意味も持っていた。すなわち学園を仇なす者、貶める者、という意味である。それは学園反乱を行ったイクサゼル・クェーディチェリがゴパスだったことが原因という。
そしてキースは、言うまでもなく金髪で、だからこそ今回心の導師が予測した事件を、彼が起こすのではないか、と予測が立てられているのだろう。
それは言うまでもなく濡れ衣だった。あまりの理不尽さに、ラジィは怒りを覚える。
「そうよ!うちの専攻はいくら消費魔力が少ないって言ったって、ゴパスがトップ取れるようなレベルじゃないわ!」
少なくとも、自分は混血なんかに負けるものか、という意地も含まれていた。
専攻の価値にまで話が及ぶと、さすがに沈黙していた緑の導師が動いた。ガタンと音を立てて席を立ち、彼女たちをじろりと見る。アウリーはびくっとしたが、流の導師を追っかけていたラジィは、堂々とそれを受け止めた。とはいえ、温厚な彼の怒りは、彼女に冷や汗をかかせるのには十分である。
「ゴパスについて、何を知っているというんだ?」
前知識のなかったラジィは思いつく一般知識を述べ、その補足をアウリーがしていった。二人の説明は、明の導師が感心するほど細かく、「知識がある」と十分に言える状況だ。
しかし全て聞き終えたところで、緑の導師は嘆息する。