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エイユウの話~冬~

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 彼女が着いたとき、職員室の前にはすでに紫色とオレンジの組み合わせが目に映った。アウリーが先に来ていたのだ。ラジィを見つけると、ぶんぶんと手を振った。必要はないが、ついラ小走りになる。
「遅かったですね」
「ごめん、途中でキサカに会ってさ・・・」
 キサカと会うことは、別に悪いことではない。しかしラジィがあまりにも複雑そうに言うので、アウリーは少し気になった。しかし、そこで言葉を切った彼女に続きを促しても結果は得られないだろうし、何か思うことがあるのかと、アウリーは遠慮する。
 二人が象牙色の扉を開けると、さきほどやっとキサカを追い払ったばかりの明と緑の導師が、そろって嫌な顔をした。気持ちもわかるが、失礼な話だ。
 そこでラジィは一人、確信を持つ。やはり、キサカはここに来たのだ。そして一悶着あったに違いない。だからキサカは機嫌が悪くなり、きっと失敗したことが恥ずかしくて、逃げるように去っただけなのだ。自分の思い込みに間違いはない。
「キース君の事なんですが・・・」とアウリーが口火を切るやいなや、明の導師がため息をついた。
「あのね?ダメだって何回言ったらわかるの?」
「『ダメ』だけでわかりません。理解できないと、あきらめられませんから」
 言い争うような言葉を並べ立てているものの、その声は震えていて、迫力に欠けていた。当然導師たちもその情けない様子に気づき、しかしそこを責め立てるのもかわいそうで、むしろ言葉に悩んでいる。けれども次の言葉で、導師たちの顔色が変わった。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷