小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

エイユウの話~冬~

INDEX|65ページ/80ページ|

次のページ前のページ
 

「俺、そんなこと言ったっけか?」
「言ったわよ!なんであんた自身が覚えてないの?」
 詰め寄って叱りつけると、キサカはしばらく考えるしぐさをしてから、強い思いを秘めた黄色の瞳を向ける。数秒とはいえ、まだ多少なりとも好意を抱くラジィにとって、こう見詰め合うのは結構恥ずかしかった。が、キサカの言葉に雰囲気は打ち壊れる。
「お前、俺の記憶力を過信してないか?」
 自分ひとりがふんわりとした気分に浸っていたことが、ラジィにはとても悔しかった。そのため、思わず頭を引っ叩いてしまう。
「いってぇな!」
「授業に出ずにクェーディチェリの名前が出て来んだから、自分の発言くらい覚えなさいよ」
「ただの思い付きを一言一句覚えてられるか!」
 アレだけ入り組んだ話が、全部思い付きだというのか。そうなると今度は本当に負けた気がして、とうとう諦めてしまった。そんな決断を下されてしまっていいのだろうかと、アウリーは少し疑問に思う。
 しかし、ラジィの言いたいことは全員理解した。
 敵陣筆頭と考えていた流の導師が、味方かもしれないという話だ。信じられない気持ちにあふれているのは事実だが、同様にキースの情報を流してくれたのも事実である。
 灰色の空からは、一本だった光の梯子が何本もかかっていた。雲間が増えて、寒々しい水色の空も覗いてくる。枯葉もない大地に木枯らしが吹いて、抜けた芝生で遊んでいった。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷