エイユウの話~冬~
「わざと漏らした・・・?」
冷酷と名高い流の導師。口達者なキサカとも対等に渡り合う口をもち、従わせるためなら暴力もいとわない。もしあそこで問い詰めたのが他の導師だったら、逃げるために口を割っただろう。けれどもいつもの流の導師なら、全員をはたき倒して職員室を出たはずだ。それなのに、情報を漏らした。これがわざとでないなら、なんと言うべきか。
ガラリ、と職員室の扉が開く。吃驚して振り返ると、地の導師が立っていた。
「あ、またあなた達ね。教えないわよ、なんにも。さ、出てって出てって」
呆然としていた彼等は、さっさと追い出されてしまった。
冬は寒いので食堂に集まろう。みんなでそう決めたのに、ほうけたまま歩いていたら、いつの間にか中庭に着いていた。灰色の空には一筋の光が差していて、しかし三人ともそんなことには気付いていない。
日光のおかげで少々暖かな中庭の広葉樹は、もう綺麗に枯れきっており、たくましい枝が伸びているのがはっきりと勇姿を表現している。それは伸びた光に手を伸ばしているかのように思えて、三人の目には希望の象徴のように映った。
「流の導師様が、放置派だったってこと?」
ラジィの呟きを聞いて、二人が彼女を見る。が、その顔は共にマヌケなものだった。
「放置派ってなんですか?」
キサカがこの話をしたとき、アウリーはその場にいなかった。そのため、知らないのは当然である。それを思い出してラジィが説明すると、今度はキサカが首をかしげた。