エイユウの話~冬~
十分も経たないうちに、職員室に着いた。アウリーがドアをノックする。当然返事は無く、自分で引き戸をがらりと勢いよく開けた。ずんずんと突き進むアウリーに従い、ラジィとキサカも中に入る。廊下が寒かったため、ふわりと流れ込んでくる暖気が、隙間からじわりと体に染みこんできた。
「またお前たちか」
今日中にいたのは、流の導師ただ一人だった。冷酷の導師といわれ、校則に厳しい男である。校則で攻める相手としては望ましいかもしれないが、キースの解放を求めるには苦戦を強いられるだろう。しかしそんなことに関係なく、キサカとラジィは運が無いと感じていた。
アウリーは導師の前に行くと、しっかりと見つめる。しかし、彼は気にせず仕事を続けていた。負けずに彼女は、いつもからは想像できない声量ではきはきと喋る。
「一ヶ月以上経ちました。キース君を解放してください」
手が止まった。彼女が省略した部分を早々と察したのだろう。導師はゆるりと鋭い視線を向けた。面立ちが綺麗なだけに、迫力がある。
「導師の子供だからと、調子付くのもいい加減にしろ」
途端、キサカが近くにあった緑の導師の椅子を蹴飛ばした。大きな音が四人しかいない職員室に響く。導師はキサカに目の対象を変えた。
「貴様もひどく青いな」
「てめぇよかは、ガキなもんでね」
キサカは不敵な笑みを浮かべ、彼を睨み返す。外の寒さとは関係なく、場の空気が凍りついた。静画のような時が流れる。
それを動画に戻したのは、ラジィだった。