エイユウの話~冬~
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昼過ぎの食堂というのは空いていていい。机もあって、飲み物や食べ物もあふれていて、話し合いをするにはうってつけの場所である。
そこで「手段」について、三人で話し合うこと一ヶ月。どれもこれも失敗に終わり、ラジィはいい加減諦めかけていた。
「もう一ヶ月以上経ったのよ。きっとキースもそろそろ出てくるって」
「限らねぇだろ」
手段を考える一ヶ月の間に、導師からの信頼はなくなったと言っていい。脱獄の手助けをする可能性があると判断され、彼等はキースと面会することは愚か、その状況すら教えてもらえなくなっていた。おかげで三人の心配は募るばかりである。
冬の空は灰色に染まっていて、今の彼等の状況をうまく表現していた。ところどころから日が洩れるたびに、雲は移動してその穴を塞ぐ。また穴が開けばそこから、とそんなのをくり返していた。日が進むうちにどんどん雲は厚くなり、最近まったく太陽を見ていない。
食道にはストーブがあり、二人は最も近い席に腰を下ろしていた。
「キサカ君、ラジィ」
二人が顔を上げると、授業を受けていたアウリーが走ってきた。心の専攻授業だったので、彼女だけ授業があったのである。
彼女は何かを決心したかのような顔で、机をバンと叩いた何かを思いついたときにやる、彼女の癖である。二人も最近発見したばかりの癖だ。