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エイユウの話~冬~

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 三人はキースを牢獄に残し、その場所を後にする。
 地下牢から出るための階段に向かう途中、二人は一言も話さなかった。ただ黙々と歩き、視線はモノトーンの風景に向けられている。ラジィは何回か口を開きかけたけれども、どんな話をしても今は違う気がして、よく解らない声を発するだけにとどまっていた。
 そんな彼女の気遣いも知らず、キサカはただ怒りに震えている。しかし今まで一人でいることが多かったため、ここまで他人のために怒れることにくすぐったさも感じていた。それでも、今は導師たちを憎む気持ちが先行しているのが悲しい
 不意に、何かが聞こえた。思わず足を止めて、すぐ近くの牢獄を見る。マジックミラーになっているため、中の人を見ることができた。だからこそ、息も帰りもこうして怖い思いをしているわけなのだが。
 他の人たちはただ牢獄の中にいるだけだった。どんな気違いな様子の人間であろうと、繋がれている姿は見なかった。白さと暇さで気が狂ったんじゃないかと思える程だ。しかし、その牢獄は違った。一人の男が、手首に枷を付けられて、吊るし上げられているというにふさわしい姿で投獄されている。
 まさに、罪人。
 ぎょっとしたが、今は時間を守るのが先決だ。キサカが歩を進めようとすると、また聞こえて来た。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷