エイユウの話~冬~
「もしかして・・・そういうこと?」
意味の解らないつぶやきに、キサカの眉間に縦じわが走る。彼を無視して、ラジィは四つんばいでアウリーに詰め寄った。彼女は微動だにしない。
「ねえ、そういうことなの?」
表情一つ動かさなかったアウリーの顔が、少しゆがんだ。きゅっと凛々しかった眉は水平になり、目はゆらゆらと揺れる。そんな彼女をかばうように、キサカがラジィの襟をつかんで座らせた。立ったまま、えらそうに尋ねる。
「何が『そういうこと』なんだよ」
彼は不機嫌だった。解らないまま話が進んでいくのがつまらなかったのか、アウリーが悲しい思いをしたことが嫌だったのか、どちらが原因かは解らない。ラジィはそんなキサカを見ずに言った。
「導師様から面会の許可が下りた理由よ」
「可愛い娘からの頼みに断りきれなかったんじゃねぇの?」
導師が嫌いなキサカは、皮肉たっぷりに言った。すると、ラジィがキサカをにらみつける。今までにない迫力に、キサカはつい押し黙った。彼女は再びアウリーのほうを向くと、ゆっくりと話しながら確認を取る。