エイユウの話~冬~
「どうして?なんで諦めちゃうのよ!」
「こいつの言うとおりだ!キースもお前も、何も変わってねぇだろ?」
疑問点を次々と並べる二人に、アウリーは一言も返さなかった。きっとここが監獄じゃなかったら、うるさいと誰かに一喝されてきてもおかしくない。
違和感に暴走した二人を止めたのは、お礼を告げただけのキースだった。
「二人とも、落ち着いてって」
「落ち着けるか」「あんたはだまってなさい!」
先ほどまでアレほど心配していた人物に対し、二人はもういつも通りになっていた。ついおかしくて、うれしくて、キースは笑い出す。そうしたらそうしたで「笑い事じゃない」と怒鳴られて、結局後半はずっと怒られ続けていた。怒られている当の本人は、とても楽しそうだったけれど。
二人は肩で息をしなくてはならない状態になって、やっと言葉を止めた。よく喋るものだと、クルガルが薄目を開けて二人を見ている。キースはもう苦笑いと謝罪しかしてなくて、アウリーは彼が責められている間もずっと黙っていた。
深呼吸して冷静になったラジィが、ふと思い出す。