エイユウの話~冬~
「ひ、ひどいですよ!」
「大丈夫大丈夫、似合ってるから」
「嬉しくありません!」
泣きそうな顔で額をこするも、紋様はもう移動しないようで、彼女はいつもピンで留めている前髪を、慌てて下ろしていた。好きな人との久々の再会なのに、あんまりだとアウリーは頬を膨らませた。
「さ、行くわよ」
ふてくされるアウリーと、それを満足げに見るキサカを見比べてから、ラジィが踏み出した。掌を壁につけると、そこだけふにゃっと柔らかくなって、まるでこされるようにして中に入れた。
残りの二人も続いて入ったが、キースはまだ眠っていた。枕代わりになっているクルガルもまた、一緒に眠っているようだ。
生気のない顔で眠る彼に、ぞっとしてキサカが駆け寄る。彼の持っていたりんごが転がった。が、それに気をとられることもなく、残りの二人も慌てて駆け寄っていく。キサカがキースの肩を掴んでゆすったが、反応がない。ラジィもさっと彼の前にしゃがみこんで覗き込んだが、息をしているのかも解らなかった。
「「キース!」」「キース君!」
青ざめて彼の名を呼ぶと、彼がゆるゆると目を開けた。焦点の合わない瞳が、ほっとした三人の顔をとらえる。それから特有のふんわりとした笑いを見せた。
「あー・・・。三人とも、久しぶりだね」
力なく体制を直すキースを、同じく起きたばかりのクルガルが手伝う。その様子をキサカは安心と、のんびりとしすぎるキースにいらだちながら息を吐いた。アウリーはおどおどとりんごの回収に向かう。ただ一人、ラジィがすっと立ち上がって怒鳴った。