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エイユウの話~冬~

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「・・・アウリー、これ、隣の監獄のモニターだぞ」
「え!」
 当然ながら、監獄ごとに暗証番号は違う。そのため、隣の監獄にいくらキースの監獄の暗証番号を入れても、警告音が鳴る以外何も起きないのである。
 大きく息を吐いたキサカは、キースの監獄のモニターの前に移動し、しっかりと番号を確認してから、メモ帳をじっと見て番号を入力した。
 しばしの沈黙の間にひどい緊張が走る。モニターを変えたから、また二回は大丈夫なのだが、余裕があるに越したことはない。
 ガコンと先ほどとは違う音が鳴って、キサカの掌に紋章が投影される。
「なんだこれ?」
 投影された紋章は、そのままキサカの手に残る。彼の質問に答えるように、モニターから女性の声がした。
『それを使うことによって、出入りが可能となります。複数人入場なさる場合は、使用前であれば、体の一部にコピーすることが出来ます』
「・・・だってさ」
 そういってから、キサカは片手を挙げる。もちろん、紋様の刻まれたほうの手だ。ラジィはキサカのほうにすたすたと歩いていくと、パンと勢いよくタッチする。それから彼女が自分の手を見ると、そこには同じ模様が浮かんでいた。
「こんなので充分みたいね」
 アウリーがてとてと歩いてきて、キサカの手に手を伸ばした。キサカが手を合わせようとも思ったが、彼女とそれをやるのがひどく恥ずかしくて、そのまま額にポンと手を置く。はっきりと見えるアウリーのおでこに、見事に紋様がついた。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷