エイユウの話~冬~
「今回の件、アウリーの占いの結果も関与してるみたい」
「・・・どういうことだ?」
彼はただ「誰かを助けないで」と言われただけだ。現実にはまさにキースを助けようとしているところで、言いつけを破ったようにも見える。だが、彼はまだ会おうとしか思っていなかった。
ラジィはキサカの手持ち無沙汰を埋めるものを見つけ、そのまま話を続けていく。
「今回、なんでキースが幽閉されたと思う?」
「金髪だからとか、そんなくだらない理由だろ」
「ま、あたしもくだらないとは思うんだけど・・・」
彼女はキサカの前に移動すると、導師室のほうを見た。彼もついそちらに視線を向ける。中庭から直接導師室は見えなくて、今目の前にあるのは異常なほど真っ白な建物の一部だ。重い柱にはひびが入っていて、生徒たちを恐怖させている。
「学園反乱って知ってる?」
「あれだろ?クェーディチェリの起こした」
キース幽閉、アウリーの予言と繋がらない質問に、キサカは呆然とした顔で返した。知識はあるが、彼女の意図が読み取れない。
学園反乱とは、イクサゼル・クェーディチェリという生徒が起こした事件である。優秀であふれるほどの魔力を有する彼が、学園を破壊し、関連する様々な人々を殺しまわったという、学園史にも魔法史にも残る大事件だ。建物にある傷の多くも、そのときついたものだとされている。とはいえもう何百年単位で昔の話だ。例の「黄金の術師(ジャーム・エワ・トゥーロル)」の舞台としても有名な事件である。
急かす気持ちが出始めたキサカに対し、平然と答えられたことがラジィには悔しかった。中級の彼女は教えてもらっても、理解に時間がかかったと言うのに。