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エイユウの話~冬~

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「もし幽閉していないのに勝手に部屋を処分したら迫害ですよね。学校に来れなくなっているのもそうですし。迫害意識の薄くなった今の学園はキース君には逃げ出したい場所ではありません」
 まいった。いくら問題児とはいえ頭のいい人々とつるんでいると、かくも影響されるものか。彼女の頭の回転は以前よりずっと早くなっている。
 逃げ道をたたれた導師は、大きくため息をついた。
「ああ、そうだよ」
 彼女は場所を聞かなかった。だが、それを肯定されれば、もう場所はわかったも同然である。
 この学園で教師をしている導師という存在は、アルディ社会で最高峰の法師である。導師に敵う法師の存在はなく、警察との縁も強い。そのため魔法に関わる重犯罪者たちは、導師の結界という最強の防壁のもとで管理されていた。しかし導師といえど、何千メートル先の収容所に魔力を放ち続けるわけには行かない。
 そこで、この学園の地下には地下牢が存在した。学園内でもほんの一部の人しか知らない情報だが、導師の娘であるアウリーには「空が青い」と同じように平然と認識している。そして学生とはいえ「幽閉」を行うのだから、そこ以外思い浮かぶ場所もなかった。
「解りました。探しに行ってきます」
「ちょっと待ちなさい」
 踵を返したばかりのアウリーの背に、導師が話しかけた。彼女は向きを戻すのが面倒臭くて、その場で首だけ振り返る。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷