エイユウの話~冬~
「キースを何処へやった?」
低く強い声に、導師は身を震わせる。それがばれないように彼の手を軽く払って、静かに逃げた。そこで思い出す。問題児の金糸の友達に、明の最高術師がいたと。授業にほとんど出てこないからという、最悪の覚え方をされている彼だ。
そうなると緑の少女の正体も分かった。金糸のお目付け役、緑の次高術師である。考えてみれば娘には友達が少なく、それで幾分かしぼれただろうと、少し自虐した。
軽く咳ばらいをした彼は、しかし首をかしげる。
「ケルティアがどうしたって?」
「しらばっくれんな。てめぇ以外にキースを幽閉する奴がいるかよ」
導師は思わず心中で彼らの行動力と推理力に拍手をした。あれだけ注目を集めていた存在でありながら、いざいなくなれば誰も気づかないのかと、少々現代と昔の人間関係の濃度差に驚いていたばかりの時である。
しかし、導師はもう一度はっきりと言った。
「知らないよ。大体なぜ私なんだ」