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エイユウの話~冬~

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「お父さん、ですよね」
 アウリーが静かに言う。つい話に夢中になり、彼女がどのくらいまで来ているのは気付けなかった。キサカとラジィは声のかけ方も忘れて、そろって責任転嫁をし始める。
 するとアウリーが話を続けた。
「流の準導師の方々は特に元心の術師が多いですから」
 流の魔術は難易度もそれなりにあるが、修理現場や病院、魔法結社においても需要があるので、不足しがちなのである。そのため学校まで人員が回らず、十人近くいる準導師のうちでも、二人ほどしかいないのが現状だ。だから結局、準導師志望の心の術師が回ってくるのである。
 しかもついでに言えば、心の準導師になりたがっている準導師が一番多いのも今は流だといわれている。麗しの導師のもとで働けるのを喜ぶのは案の定女性のみで、男性たちはさっさと鞍替えしたいと思っているのだとか。そのため、心の準導師として次に押してやるといえば、一番簡単に動くのは流の男性の準導師だろう。まさにアウリーが見たものとぴったり条件が一致する。
 アウリーはキサカの顔は見ずに、ラジィの手をつかんだ。そのまま引いて歩き出す。
「導師室に行くのでしょう?さっさといきましょう」
 そういってすたすたと気丈に歩き出したアウリーにラジィは驚きながら、ぐいぐいと引かれていく。腹を括ったアウリーの態度の変化に頭をガリガリとかきむしったキサカは、先ほどまでの勢いを忘れ、彼女たちに続いて歩きだした。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷