エイユウの話~冬~
「ちょっと、待ちなさいってキサカ!」
「急いでんだよ、疲れたのか?」
振り返りもせずに返したキサカの肩を、ラジィが力いっぱい引いた。向きがぐるりと変えられる。そこで初めて彼女の言わんとするところがわかった。
アウリーが遥か遠くにいたのだ。小柄な彼女は歩幅も小さく、心という非戦闘魔術を習っているため体力も乏しい。そのため、どんどん置いていかれていたのだ、いつもならキースが中間に入ったりしているのだが、今日はいないため二人との間がむなしく空いていて、彼女を必要以上に焦らせていたのである。
ハァと大きく息を吐いてから、キサカは向きを変えて待つ体制になった。自虐だか苛立ちだかわからない言葉が零れる。
「急いでんのに、何やってんだか・・・」
言葉の意味など判断もせず、ラジィはキサカを睨めつけた。