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エイユウの話~冬~

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 全員がエレベーターに乗ったのを確認すると、ラジィは「閉まる」のボタンを押す。行きに空虚を感じた空間は、息苦しいほどに狭く思えた。
 鮮やかな緑色の床を見つめるアウリーに、一番奥に乗っていたキサカが尋ねる。
「一つ聞かせてくれ。キースを呼んだ男のズボンは、何色だった?」
「ズボン・・・ですか?」
 人ごみに消えていく姿を後ろから見ただけだったが、その色はしっかりと覚えていた。意外に思ったことが、彼女の記憶に繋がったのだ。アウリーはしっかりとした口調で答える。
「確か、茶色でした。だから流の方かと」
「やっぱりな」
 キサカは推測を確信へ変えた。解らないラジィが問い詰めようと口を開く。それと同時にエレベーターの扉が開いた。ドアが閉まる前に三人は慌てて飛び出す。寮のエレベーターは一致してドアが閉まるのが早いという欠点があった。
 そんなドアが閉まるより早く、キサカは歩き出した。女性二人も後を追う。
 歩いて数分も立たないうちに、ラジィが大声を出した。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷