エイユウの話~冬~
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(前略)彼の家系の者であると、彼女は言いました。そしてここに住んでいるもの全てが彼の家族であるとも。しかし、そう紹介された人々の頭は私たちと変わりはなく、ただ攻撃的な光を放っているだけでした。
たまらず私は問いました。もちろん、彼の耳についてです。彼もほぼ同時に口を開き、まるで斉唱のように声が重なりました。
場が凍りついたのを、私は肌で感じました。人々は私たちを見開かれた眼で見てから、すぐに視線をそらしました。まるで、悪い何かを見たかのように。それから誰一人としてこちらを見ず、声も出さずに数十分が流れたように感じました。
「あの人は・・・」と代表して老婆が口を開きました。私たちはそれに耳を傾けましたが、彼女が語ったのは、彼の半生でした。
(中略)
「あの人が倒れたのは、それから十日後だったらしい。医師はもうだめだと打つ手を止め、しかし家族は諦めることができなかった。そこで古に沈んだ禁忌の治療法に、家族の人は踏み込んでしまったのだ」
大きく息を吐いた老婆は、私たちを淀んだ色の瞳でとらえました。
「『魔物喰らい』という治療法に」
(「黄金の術師(ジャーム・エワ・トゥーロル)・第二章第六話」より一部抜粋)