エイユウの話~冬~
「・・・悪いけど、キサカに一票」
唯一キースの部屋に来たことのある経験者いわく、キースが寝ている間でも、大体クルガルが起きて番をしているらしい。学校に行かないことに罪悪感を抱いて、学校よりの使者が来たときに自分が寝ていてもいいように配慮しているのだそうだ。
そんなんならはなから休むなよ、とキサカは悪態を吐いた。しかし、キースの性格は自分には測れないものだと理解している。彼の考えはすぐに本題に戻った。
「じゃあ何でいないんだ?」
「病院じゃないですか?」
「ありえないわ。学園には医療法師の最高峰『冷酷の導師』がいらっしゃるのよ?」
禁句を口にしたと思ったアウリーだが、思いのほかあっさりと流の導師の名前が出たので、キサカともども目を丸くした。引きずっていないというのは本当らしい。
驚く二人を尻目に、ラジィはドアノブをガチャガチャと鳴らす。しっかりと鍵が閉まっていて、簡単に入れそうになかった。鍵穴を覗き込むと、やっぱり他の寮と同じウォード錠。なんか適当にやって開くようなものではなかった。
ふいに、ラジィは思いつく。くるりと振り返った彼女は、キサカを指差した。