エイユウの話~冬~
「何の用だい?」
「解ってるくせに聞くか?」
「こっちのセリフだよ」
事務的行為であるとキサカが察したことを、おばさんはさっさと見抜いていた。情報管理をしているせいか、術師課の人たちは多くが人を見抜く術に長けている。
楽しそうにヒヒッと笑うと、キサカは突然きちんと姿勢を正した。いつも気の抜けたような彼がやると、なんだか妙に思える。
「休みが続いているようなので、友として見舞いに行きたく思っています!」
「そんなに畏まらなくていいだろうよ」
ついおばさんも笑っていた。キサカはまた元の体制に戻る。おばさんは「仕方ないね」といいながら、早々と取り出していた管理表を広げた。学生のキサカに見えないように、その中から部屋を探す。
普通は友人同士で部屋番号の話をしたり、直接言ったりするものなので、管理表は利用されない。使うとすれば、たまたま同じクラスの欠席者に届けることがあったり、異専攻の友人のときだけだ。階や並び順が専攻ごとに違うため、道案内でもしてもらわない限り場所を知ることは出来ない。もちろん女子寮、男子寮も同様である。また、キースの部屋はいじめられることを恐れて、表札がかかっていないため、見た目は空室扱いになり、入って探すのも大変だった。
おばさんがふと声を出した。