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エイユウの話~冬~

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 昼食を食べ終えたキサカは、二人と別れて一人中庭にいた。午後に授業はなく、寮に帰っても億劫なので、ここでのんびりとしていることが多い。ふとシャウダーを片手に身を起こす。どんどんたまる発信履歴に無力感を覚えながらも、キースと連絡を取ることを諦められていなかった。
 何回も何回も電話をかけたのだが、やっぱり出る気配もなく、キサカはいらだってシャウダーを芝生に投げつけた。高さがあまりないため、壊れずにすむ。
 連絡が取れないとやっと諦めた彼は、シャウダーを拾わずに平行に寝転がった。何かできることはないかと、青々とした空を無気力に眺めた。
 ふいに、彼に何かが舞い降りてくる。
 その提案が浮かぶや否や、彼は立ち上がって術師課にむかって歩き出す。術師課は大学の学生課、高校の事務室だと思っていてくれていい。
 受付に着くや否や、彼はいつもどおりの横柄さで術師課のおばさんに声をかけた。
「おばちゃん、キースの部屋ってどこ?」
 受付の机についた片肘に体重をかけて、だらりと気の抜けた格好をした。その姿を一瞥してから、諦めた様子で彼に注意をする
「・・・少しは口の利き方が直らんかね」
 ここでは寮の設備や学生の情報を管理しているだけでなく、キースという例外や導師の情報も扱っている。したがってキースと友人関係にあるキサカは、他の学生よりも来る事が多かった。そのため、なんだかんだで事務員の人たちと仲良くなってしまっていたのである。彼の気楽さも手伝ったのは、言うまでもない。
 予想は出来るものの、事務的行為として必要なのだろう。一応キサカは尋ねられる。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷